OSTEOPOROSIS 骨粗鬆症

「人生100年時代」を見据えた骨粗鬆症の対策を!

「人生100年時代」とは、英国ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏が長寿時代の生き方を説いた著書『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)』(2016年)にて提言された言葉です。同書では「過去200年間、人の平均寿命は伸び続けており、そこから導かれる予測によれば2107年には主な先進国では半数以上が100歳よりも長生きする」と語っています。

また、「長生き=幸せ」とは限りません。経済的な問題もあれば、介護など周囲への負担の問題もある。それらを踏まえたうえで、「人生100年時代」に備えていかなければなりません。 「人生100年時代」に向かえ骨粗鬆症に取り組むことが大切と考えております。

当院の骨粗鬆症治療

現在、日本は超高齢化が進み男性平均寿命は81歳、女性87歳となりましたが、介護の必要のない健康平均寿命は73歳であり、このことから介護期間を10年以上必要とする事を意味します。 この介護の原因の約12%が転倒による骨折であり、その大部分が背骨、足の付け根、手首、肩などの骨粗鬆症による骨折です。

これらの骨折は寝たきりや車いす生活を引き起こし死亡の相対リスクを5~8倍にあげるといわれていますが、適切な骨粗鬆症の薬物療法を行うことで転倒・骨折の約50%が予防でき、また栄養療法と運動療法を併用して行うことでさらにリスクが軽減するといわれています。

当院では、腰椎、股関節の骨密度を測定するDEXA(dual-energy X-ray absorptiometry/デキサ)法と、採血により骨代謝マーカーを測ることでより精密に骨密度の測定し評価することが可能となっており、患者さん1人1人に合ったオーダーメイドの骨粗鬆症治療を提供しています。

  • 重いものを持つと背中や腰が激しく痛む
  • 背中や腰の曲がりが目立つ
  • 身長が縮む
  • 転んだだけで骨折する

※骨粗鬆症について少し話を聞いてみたい方、骨折が不安な方、
骨密度を一度調べてみたい方など、お気軽に当院にご相談ください。

特に女性は55歳前後で一度検査を

女性はおよそ50歳前後で閉経を迎えると言われますが、閉経になると女性ホルモン(エストロゲン)が減少していきます。

エストロゲンには、骨の新陳代謝に対して骨吸収をゆるやかにし、骨からカルシウムが溶けだすのを抑制する働きがあります。 これが減少することで骨吸収のスピードが早まり、次第に骨形成が追いつかなくなり、骨がもろくなっていくのです。 このようなことから、特に女性は、55歳前後に一度は骨粗鬆症の精密検査を行い、定期的に検査を受けることを推奨しています。

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症は加齢が主な原因で、骨の中のカルシウムの量(骨量)が減少し、鬆(す)が入ったように骨がスカスカになり、もろくなる疾患を言います。 つまずいて手や肘をついた、くしゃみをしたなど、わずかな衝撃でも骨折をすることがあります。

患者全体では、高年齢の女性患者が多いことでも知られていますが、無理なダイエットや運動不足などの不摂生な生活習慣・特定の病気(関節リウマチ、糖尿病、慢性腎臓病、動脈硬化など)や薬の副作用(ステロイド薬の長期服用など)で発症することもあります。

骨粗鬆症の分類

大きく分けると原発性の骨粗鬆症と続発性による骨粗鬆症に分けられます。原発性の骨粗鬆症は、閉経後骨粗鬆症と老年性骨粗鬆症が同時に起こりやすい病気です。

原発性 続発性
閉経後骨粗鬆症
女性ホルモンのエストロゲンは、骨の中へのカルシウムの取り込み調節を行っています。閉経後、女性ホルモンの欠乏により、骨密度の低下が引き起こされます。
閉経後骨粗鬆症
女性ホルモンのエストロゲンは、骨の中へのカルシウムの取り込み調節を行っています。閉経後、女性ホルモンの欠乏により、骨密度の低下が引き起こされます。
老年性骨粗鬆症
加齢とともにカルシウム欠乏と骨破壊と新しい骨形成の速度の不均衡の結果として生じるものをいいます。 通常は70歳以上の後期高齢者に発症しますが、女性は、男性の2倍もこの症状が発症しやすいです。

骨粗鬆症の症状

  • 重いものを持つと背中や腰が激しく痛む
  • 背中や腰の曲がりが目立つ
  • 身長が縮む
  • 転んだだけで骨折する

初期には自覚症状が乏しいため、転倒などで骨折してはじめて骨粗鬆症と診断されるケースが少なくありません。 骨粗鬆症が進行すると、前述した症状などが現れます。

高齢者であれば骨折や背中、腰の激痛が原因で、寝たきりや介護の必要な生活になってしまうこともあります。また姿勢が悪くなることで内臓が圧迫され、呼吸器や消化器の機能が低下します。

骨粗鬆症が原因でおこる「背中が曲がる」ことによる様々な症状

圧迫骨折後の神経障害 背中や腰に痛みを生じたり、骨折後に神経障害が起きることがあります。
心理的負荷 女性では容姿が変わることにより女性らしさの喪失感からくる心理的負担もみられます。
腹部膨満感、食欲不振、便秘・痔核 内臓が収まるスペースが小さくなるため、胃腸症状の異変、例えばお腹がふくれた感じがするとか、食欲不振、便秘、痔になる場合もあります。
逆流性食道炎 逆流性食道炎により胸やけすることもあります。

骨粗鬆症にかかりやすい方

以下のような方が、骨粗鬆症にかかりやすいと言われています。

  • 家族に骨粗鬆症の人がいる
  • コルチコステロイド服用者
  • 過度のアルコール摂取
  • 早い閉経
  • やせた体型
  • カルシウム・ビタミンD不足
  • 運動不足
  • 喫煙

骨粗鬆症の検査

骨粗鬆症の診断は、骨密度の測定で行います。骨の代謝の状態を評価するのに、血液検査や尿検査を追加することもあります。 骨密度検査には、骨の強さを判定する際の重要な尺度の1つに“骨密度”があります。当院では、以下の測定を行っております。

DXA(デキサ)法 DXA法は、二種類の異なるエネルギーのX線を照射することによって、骨密度を測定します。 当院では、学会でも正式な診断指標とされており、かつ、最も骨折してはいけない部位である、腰椎と大腿骨頸部の骨密度を測定し判断します。
身長測定 25歳の頃の身長と比べて、どのくらい縮んでいるかを調べます。25歳時より4cm以上低くなっている場合は、それほど低くなっていない人と比べ、骨折する危険性が2倍以上高いという報告があります。
血液検査 血液検査で骨吸収マーカーと骨形成マーカーを測定し、治療方針を決定したり治療効果を判定します。

骨粗鬆症の治療法について

食事療法

骨粗鬆症の治療や予防に必要な栄養素は、骨の主成分であるカルシウムやたんぱく質、および骨のリモデリング(※)に必要なビタミンD・Kなどです。 カルシウムは食品として700~800mg/日、ビタミンDは400~800IU/日、ビタミンKは250~300μg/日を摂取することが勧められています。

これらの栄養素を積極的に摂りながら、しかもバランスの良い食生活を送ることが大切です。 骨粗鬆症の人が避けるべき食品は特にありませんが、リンやカフェイン、アルコールなどの摂り過ぎには注意しましょう。過ぎた量のアルコールは、カルシウムの吸収を妨げたり、尿からのカルシウムの排泄量を増やしたりします。

カフェインもまた、カルシウムの排泄を促します。リンを摂り過ぎると、血液中のカルシウムとリンのバランスを保とうとして骨の中のカルシウムが血液中に放出されてしまい、骨密度の減少を招きます。

※リモデリング:骨を壊す働きをする「破骨(はこつ)細胞」が骨を吸収する一方で、骨を作る働きをする「骨芽(こつが)細胞」が、破骨細胞によって吸収された部分に新しい骨を作る代謝作用のこと。

積極的に摂りたい栄養素を多く含む食品

カルシウム 牛乳、チーズ、干しえび、しらす、ひじき、わかさぎ、いわしの丸干し、えんどう豆、小松菜、モロヘイヤ など
たんぱく質 肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品 など
ビタミンD あんこうの肝、しらす干し、いわしの丸干し、すじこ、鮭、うなぎの蒲焼き、干し椎茸、きくらげ、煮干し、干ししいたけ など
ビタミンK 納豆、抹茶、パセリ、しそ、モロヘイヤ、しゅんぎく、おかひじき、小松菜、ほうれん草、菜の花、かいわれ大根、にら など

運動療法

骨は体重の負荷をかけることで丈夫になりますが、必ずしも強度の高い運動が必要というわけではありません。 ウォーキングのような軽度の運動をするだけでも十分に効果があります。 とにかく長く継続することが大切です。

薬物療法

薬は「骨の破壊を抑える薬」「骨の形成を促す薬」「骨の材料を補う薬」の3種類に分けられます。 骨折の危険性が高い場合は、主に「骨の破壊を抑える薬剤」を使用します。また、いくつかの薬を組み合わせて治療することもあります。骨粗鬆症の薬は、安全でしっかりと効き目が出るように飲み方が決まっています。 いっしょに服用してはいけない薬や、飲んだ後に食事をしてはいけない場合もあります。 必ず医師や薬剤師の指示通りに服用することが大切です。

骨の破壊を抑制する薬

ビスホスホネート剤

【特長】

骨からカルシウムが溶け出すの(骨吸収)を抑制し、骨密度を増加させ、さらに脊椎や太ももの骨の骨折の発生率を減少させます。腰や背中の痛みを経減するものもあります。現在、骨粗鬆症治療の第一選択薬です。1日1回服用するものと週に1回、4週(1月)に1回服用するものがあります。また、注射剤やゼリー剤もあります。

【注意点】

副作用として胃腸障害があります。のみ薬は朝食前に服用し、服用後30分もしくは60分は横にならないことや飲食を控えるなど服用する際には注意が必要です。また、ごくまれに顎骨壊死・顎骨骨髓炎*を起こしたりすることがあります。


選択的エストロゲン受容体作働薬(SERM)

【特長】

骨など、体の特定の部位でのみ「エストロゲン」と似た働きをし、骨吸収を抑制し、骨密度を増加させます。

【注意点】

副作用として更年期症状を悪化させたり、まれに深部静脈血栓症などが起こることがあります。


抗RANKL(ランクル)抗体製剤

【特長】

RANKL(ランクル)というたんぱく質(骨からカルシウムが溶け出す[骨吸収]際に働く細胞の活性化に必要)の作用を抑制することで、骨密度を増加させ、骨粗鬆症に伴う骨折を減少させます。6か月に1回皮下注射するお薬です。

【注意点】

血中のカルシウムが低くなりすぎて、手足のふるえ、筋肉の脱力、けいれん、しびれが起こることがあります。また、ごくまれに顎骨壊死・顎骨骨髓炎*を起こしたりすることがあります。


カルシトニン剤

【特長】

破骨細胞を抑制し骨量減少を抑えます。また脳内で鎮痛物質に変わるため鎮痛効果があります。

【注意点】

筋肉注射のため通院治療が必要です。副作用は、顔面紅潮、悪心などが知られています。

*顎骨壊死、顎骨骨髓炎では、歯の治療や感染がきっかけであごの骨に炎症が起こり、腐ったような状態になります。この骨の痛みや腫れ、骨が露出する、膿が出る、歯が抜ける、といった症状が現れてきます。

骨の形成を促す薬

ヒト副甲状腺ホルモン剤

【特長】

骨組織は、「破骨細胞」が古くなった骨を溶かし(骨吸収)、そこに「骨芽細胞」が新しい骨を作って修復する(骨形成)というサイクルを繰り返して、骨の構造や強度を保っています。骨形成促進剤は、骨芽細胞の数を増やし骨形成を促進することで、骨の量を増やし骨を強くして、骨折リスクを減らすことができます。

【注意点】

皮下投与する注射剤です。骨折リスクの高い重症の骨粗鬆症患者さんに適応があります。

骨の材料を補う薬

カルシウム剤

【特長】

食事でのカルシウム摂取不足、乳糖不耐症、胃腸の手術後などに使用されます。他剤と併用することが多いです。

【注意点】

骨折の危険性が高い場合には、カルシウムだけの治療では十分ではありません。副作用として、胃腸障害や便秘が現れることがあります。


活性型ビタミンD3剤

【特長】

腸でのカルシウム吸収を促進させ、骨量低下を抑制し骨折頻度を低下させます。筋力低下を防ぐため、転倒予防効果も注目されています。カルシウム摂取不足、胃腸の手術後などの患者さんに使用されます。

【注意点】

副作用として高カルシウム血症があります。特にカルシウム剤を併用している場合は注意が必要です。


ビタミンK2剤

【特長】

骨の形成を助け骨折を予防します。骨形成が低下している高齢者に適しています。

【注意点】

血液凝固阻止剤のワルファリンとの併用は、ワルファリンの効果を弱めるため、併用しないでください。

骨の破壊を抑制し、骨形成を促す薬

イベニティ

【特長】

骨形成を促進すると同時に骨吸収を抑制することができるという2つの作用を併せ持ちます。骨の構造的劣化させずに骨量を増加させ、骨強度の改善が期待できます。

【注意点】

低カルシウム血症やマグネシウム、intact-PTH等の骨・ミネラル代謝異常がある場合には、あらかじめ治療を行い、適切なカルシウム及びビタミンDの補給などの必要があります。

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